「目を閉じて20秒。できるだけクリアに脳内にイメージを描いてみて。映画かアニメみたいに。」
中学受験国語の家庭教師をしていて、生徒さんに問題文を読ませたあと、「脳内でしっかりイメージを描いてみて」と声がけをし、脳に像をしっかりと描かせると、記述問題がスムーズに進むと感じています。特に物語文。(麻布)
「目を閉じて20秒。できるだけクリアに脳内にイメージを描いてみて。映画かアニメみたいに。」
これは認知言語学的なアプローチです。
なぜ「イメージしてみて」と声がけすることが効果的か?
理由①:イメージ化は記憶と理解を深めるから
認知心理学では、「視覚イメージ(mental imagery)」を用いた理解は、言語情報の単なる音読よりも記憶の定着や内容理解に優れるとされます。「Dual Coding Theory(二重符号化理論)」(Paivio, 1971)では、言語情報と視覚情報を同時に用いることで、情報の保持や思考が強化されると説明されています。「脳に像を描いて」と促すことは、視覚イメージを活性化し、言語的な情報と二重で記憶・理解する土台を作っているということになるそうです。
理由②:「状況モデル」の形成を支援するから
読解において、読者は文章から「状況モデル(situation model)」という、登場人物や場面、因果関係などを頭の中に再構築する作業を行っています。これがうまくいかないと、記述問題で「何が起きたのか」「なぜその行動をしたのか」を書けません。家庭教師が「イメージしてみて」と声をかけることで、この「状況モデル(situation model)」の形成を意図的に促進していることになります。
理由③:ワーキングメモリの負荷を下げる助けにもなるから
記述問題では、文章の要点を「理解 → 保持 → 構文化 → 記述」という複雑な過程が必要です。文章をイメージとして保持することで、抽象的な文章構造ではなく、視覚的な「場面」として記憶されるため、ワーキングメモリの負担が軽くなり、アウトプットしやすくなります。
👉子どもたちが脳内でより鮮明に像を結べるように
中学受験塾の国語の集団授業で、先生が解説を語りかける、あれも、子どもたちが脳内でより鮮明に像を結べるようにするための手助けとしての追加情報なのでしょうね。塾はこれをやっている。
というわけですから、ご家庭で、「今日塾の国語でどんな文章読んだの?」と会話をするとか、今週のテキストをダイニングテーブルに出しっぱなしにして家族で回し読みして感想を言い合うとかで、国語が伸びたという生徒さんがいるんですね。この2つはご家庭でもできる工夫です。
脳内の像が鮮明になる。その像から明確な言葉が紡ぎ出せるようになる。読書量がものを言うのも、この脳内イメージがより鮮明になるからでしょうね。
💡中学受験物語文攻略のヒント
「今の場面、アニメのワンシーンみたいに思い浮かべてみて。」
「登場人物のキャラクターを思い描いて、頭の中で映像化してみて。」
「主人公の顔、どんな表情してるかな?」
具体的な声がけは、視覚イメージをよりはっきりさせ、「読解の質」を高めることに役立ちます。失語症になった人は脳内にイメージが描けない」という話を大学院で聞いて、この指導法を思いつきました。
👉イメージの活性化が言語の理解や産出を助ける
失語症のタイプによって異なりますが、
ブローカ失語(運動性失語):話す・書くのが難しくなるが、イメージは比較的保たれる場合がある。
ウェルニッケ失語(感覚性失語):意味のある言葉を理解・生成するのが困難で、言葉に結びついたイメージも曖昧になることがある。
こうした感覚性失語患者の観察から、「言語能力の低下=イメージの形成力の低下」にもつながることがわかり、逆に言えば、イメージを活性化することが、言語の理解や産出を助ける可能性がある?という考えに至りました。家庭教師をするにあたり、大学院で言語学を再び学び、大学時代の専攻で勉強したことをさらに深堀りしました。
👉言葉だけでなくイメージを持つ
実際に、失語症のリハビリや教育支援の場面でも、以下のようなアプローチが取られているそうです。
ピクチャーカードを使って言葉と場面を結びつける
絵を見ながら話す・書く練習をするなどの視覚支援を行う
言葉だけでなく「絵を思い浮かべる」訓練を行う
👉言葉の意味と場面を結びつける
生徒さんの中には、「文章は読めるけど、書いてある内容が入ってこない」という子がいます。これは、言葉と具体的な情景・意味が結びついていない状態。
→ イメージ化はこのギャップを埋め、言葉と現実感の接続を強めてくれます。「なんでもいいから書け。点数になるかもしれないから。」という親御さんはいささか乱暴。脳内に像が結べていないのに、言葉が出てくるはずがないわけです。
👉ことばが「文字」のままで終わらないように
失語症では、言葉がただの音や記号になってしまうことがあるそうです。これは読解が苦手な子にも共通している。「読めてもわからない」という現象。
→「映像で見せて」と言うことで、ことばが「意味」を持った「絵」として脳内に定着し、理解力や記述力が高まります。